かつての町家のニワは暮らしにとってかかせない空間であった。それは陰影の中暮らし、働く人々の空間に光を与え、夏季には涼風を呼び込むものであった。また土間には竈や井戸がしつらえられ、オクニワに植わる植物は人々の食材となることもあれば、ニワには露地の役目を果たすものもあった。
宿泊施設のコンセプトに「stay like living」とあるように、ただ部屋の中から鑑賞する庭ではなく、宿泊する人々の暮らしとともにある、機能する坪庭を作庭した。庭の中にはサラソウジュの高木、アマチャをはじめとする四季折々白色の花を咲かせる山野草を植えた。宿泊者は敷石に立ち洗濯物を干している。